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鳥羽歳時記 五月 「鮑海女」
- スタッフ日記
立夏を過ぎ、いよいよ活気に満ちた初夏の到来を感じるようになりました。
鳥羽、伊勢志摩の風物について、文筆家の千種清美先生のお話を元にご紹介する「鳥羽歳時記」第三回目です。
「鮑海女」(あわびあま)
三重県は海女の数が日本一多い地域です。
早春の若布、夏の鮑、冬の海鼠など、一年を通して漁を行う働きぶりは、古くは万葉集にも詠まれています。
なかでも鮑を獲ることは、「鮑が獲れて一人前」といわれるほど、海女にとってとても重要なことなのだそうです。
鳥羽市の国崎町には、「神宮鰒調製所」があり、そこでは熨斗鮑が作られ神宮に納められます。
熨斗鮑とは、鮑を薄く長く伸ばして干物にしたもので、祝儀袋や贈答品に付ける熨斗袋や熨斗紙は、熨斗鮑を模したデザインになっており、その名の由来となっています。
国崎の丘神の贄とし鮑干す 安藤弘一
鮑海女天に蹠をそろえたる 橋本鶏二
海女が、天に蹠(足の裏)をそろえて潜っていく様が詠まれています。
「海女」は歳時記によって春、夏に分かれますが、「鮑海女」というと夏の季語となります。
先日、ホテル館内から海女さんが漁をしている姿を見ることができました。
このあたりは栄螺や磯ものなどが獲れるようです。
海女の海かがやきわたる五月かな 平松美和子
舳の海女の腕に蛸や夏来る 阿部六弥太
岩場付近をご覧いただくと、こうした風景を見ていただくことができるかもしれません。
また、五月には鳥羽志摩地域では鰹釣りが、小型漁船の「ケンケン船」で行われます。
夜明け前に出漁しその日に帰船するため、水揚げされた鰹は鮮度の良い生の鰹・「ケンケン」として重宝されています。
志摩市大王崎では、古くからから鰹節、生節が作られてきました。
鰹の漬けで作られる郷土料理の「てこね寿司」は、特に新茶をかければ、この時期の味わいです。
南風が吹き、瑞々しく緑が繁り、海が輝きわたる五月。
生命力にあふれた美しい季節です。