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鳥羽歳時記 十一月 「冬の海」
十一月も半ば、そろそろ寒さが本格的になってきました。
鳥羽、伊勢志摩の風物について、文筆家の千種清美先生のお話を元にご紹介する「鳥羽歳時記」第八回目です。
「冬の海」
暦の上では、「立冬」を過ぎ、冬に入りました。
凩が吹き、寒さが増すこの時期ですが、鳥羽では比較的天候は安定し、穏やかな日が続いています。
この時期の、そのような日を「小春日」といいます。
先日、気温は約20度、風も凪ぎ、晴天がまぶしく海に反射していました。
突堤(とってい)のあをぞら冬に入りにけり 中岡毅雄
海の音一日遠き小春かな 暁台
この時期、伊勢湾では、鯔(ぼら)の大群が外洋へ出ていきます。
かつて、鳥羽市石鏡町の鍋釜落(なべかまおとし)岬には、魚(あら)見(み)小屋(ごや)が置かれ、魚群を見つけると魚見番が村へ知らせました。
鯔はオボコ、イナ、ボラ、トドと、成長するにつれ呼び名が変わる出世魚でもあります。
また、江戸時代には鳥羽藩の財源でもあり、当時の鳥羽城は、光に敏感な鯔が逃げないように、外側を黒、内側を白に塗っていたそうです。
(そのため、二色城「錦城」といわれていたそうです。)
伊勢平野では、大根が旨みを増し、寒風にさらす、はさ掛け作業が間もなく行われます。
そして特産の、伊勢たくあんが作られます。
鯔の飛ぶ夕潮の真ッ平かな 河東碧梧桐
伊勢湾の風をまともに大根干し 宮田枝葉
伊勢神宮では、23日に新嘗祭が行われます。
収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りします。
皇居では、天皇陛下がお育てになった新穀を天神地衹(てんしんちぎ)に供え、「神人共食(しんじんきょうしょく)」の習わしのもと、御自らもお召し上がりになります。
「食」とは生きるための栄養と捉えがちですが、お供えしたものを皆で食す「直会(なおらい)」にもみられるように、共同飲食の重要性を、日本のお祭りは大事にしています。
凪いだ海と色づいた山々。
実りに感謝し、新穀をいただく新嘗祭。
この時期ならではの風物に触れてみてはいかがでしょうか。