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鳥羽歳時記 九月 「月見」
- スタッフ日記
日中にも涼しさを感じる季節になってきました。本格的な秋の到来ももう間近です。
鳥羽、伊勢志摩の風物について、文筆家の千種清美先生のお話を元にご紹介する「鳥羽歳時記」第六回目です。
「月見」
九月、台風が日本に近づく時期です。
上旬は、大気が冷え露を結ぶ、「白露」。半ば過ぎには「秋分」を迎えます。
鳥羽歳時記四月でご紹介した、生命力に満ちた「春潮」とは異なり、「秋潮」は静まった浜でしみじみとした気持ちになります。
また、「爽やか」という言葉は、実は秋の季語です。
大気が澄み、万物が晴れやかにすっきりと見え、心身がさっぱりするこの時期ならではの表現です。
秋潮の強き面のはるかなり 飯田 龍太
爽やかや風のことばを波が継ぎ 鷹羽 狩行
そしてお月見。俳句では「月」といえば秋の月を指します。
旧暦8月15日の月は、一年でもっとも澄んで美しい「名月」とされています。今年は、9月15日でした。
(写真は昨年9月27日のものです。)
月見団子や新芋など、その年の初物を供え実りに感謝する「お月見」の風習は、江戸時代から庶民に広がったといわれています。
中秋の名月は「芋名月」ともいわれ、稲作が伝わる前の主食であった里芋の収穫期にこの時期があたることが由来です。
すすきは稲穂に見立てたものであり、月見は農耕儀礼の風習でもありました。
名月や池をめぐりて夜もすがら 松尾 芭蕉
十六夜(いざよい)といふ名を持ちて月昇る 星野 立子
そして、伊勢神宮では秋の神事が行われます。
稲刈りの時期に神宮神田の稲穂を抜き取り、束ね、麻の紐で結んで初穂を神に供える、抜穂祭。
十五夜の夜に、外宮まがたま池で催される観月会。
秋分の日前後に神楽祭が開催されます。
月を愛で、秋の稔りに感謝し、初物を神様にお供えする習わしが、現代にも続いています。